金融所得課税の強化で不動産売却の税金は上がる?2027年改正と一般の売主への影響をわかりやすく解説


1. 結論:ほとんどの不動産売却で、税率は変わりません
「金融所得課税が強化される」「2027年から増税」というニュースを見て、自宅やマンションの売却税金も上がるのではと不安に思われる方が増えています。先に結論をお伝えします。
📌 まず押さえるべき結論
・不動産売却の譲渡所得にかかる税率(長期20.315%・短期39.63%)は、今回の改正では変わりません
・強化されるのは「ミニマムタックス」と呼ばれる超高所得層向けの追加課税で、2027年分の所得税から適用範囲が広がります
・影響し得るのは、不動産・株式などの譲渡所得を合算した年間所得が1億6,500万円を超える規模の方に限られます
つまり、一般的な自宅マンション・戸建て・土地の売却であれば、この改正を理由に売却を急ぐ必要はありません。一方で、収益物件の一括売却や、会社売却(M&A)と同じ年の不動産売却など、該当し得るケースも確かに存在します。この記事では「自分は関係があるのか」を切り分けられるように解説します。
2. 「金融所得課税の強化」とは何が起きているのか
株式の売却益や配当などの金融所得は、金額の大小にかかわらず所得税15%(ほかに住民税5%)の分離課税で完結します。不動産の譲渡所得も同様に分離課税です。このため、所得が1億円を超えるあたりから所得全体に対する税負担率がむしろ下がる、いわゆる「1億円の壁」が長く指摘されてきました。
これを是正するために導入されたのが、「極めて高い水準の所得に対する負担の適正化措置」(通称ミニマムタックス)です。2025年分の所得税から始まっており、2026年3月31日に公布された令和8年度税制改正で、2027年(令和9年)分以後の適用範囲が大きく広がることが決まりました。
| 比較項目 | 2026年分まで | 2027年分以後 |
|---|---|---|
| 特別控除額 | 3億3,000万円 | 1億6,500万円 |
| 比較計算の税率 | 22.5% | 30% |
| 基本的な計算 | (基準所得金額−3.3億円)×22.5% | (基準所得金額−1.65億円)×30% |
この計算額が、通常の方法で計算した所得税額を上回る場合に、差額を追加で申告納税する仕組みです。制度の詳しい計算方法と、2026年・2027年の譲渡時期の実務は2027年分以後の追加課税の解説記事で詳しく扱っています。
3. 不動産売却が関係するのはどんな場合か
ミニマムタックスは金融所得だけを見る制度ではありません。判定に使う「基準所得金額」には、土地・建物の譲渡所得も合算されます。不動産売却が引き金になり得るのは、次のようなケースです。
収益物件・一棟マンションの一括売却
複数棟の同時売却や、取得費の低い一棟物件の売却で、その年の譲渡所得だけで億単位になる場合。
先祖代々の土地など、取得費が極端に低い不動産の売却
売買代金の大半が課税譲渡所得になるため、想定より基準所得金額が大きくなりがちです。
会社売却(M&A)・大口の株式譲渡と同じ年の不動産売却
株式譲渡益と不動産の譲渡所得は合算して判定されます。単体では届かなくても、同じ年に重なると超えることがあります。
⚠️ 「不動産単体では関係ない」でも安心できない場合
判定は所得の合算で行うため、不動産・株式・配当・事業所得などが同じ年に集中すると、単体では対象外の売却でも影響が出ることがあります。大きな資産の動きが重なる年は、契約前に税理士へ全体を見てもらってください。
4. 一般的な売却の税金は従来どおり|数字で確認
逆に、大阪で多い一般的な売却がこの制度に届かないことも、数字で確認しておきます。
| 売却の例 | 課税譲渡所得の目安 | ミニマムタックス |
|---|---|---|
| マンション3,000万円で売却(取得費等2,200万円) | 約800万円 | 対象外 |
| 戸建て5,000万円で売却(取得費等3,500万円) | 約1,500万円 | 対象外 |
| 相続した土地1億円で売却(取得費不明・概算取得費5%) | 約9,000万円 | 通常は対象外(他の所得との合算次第) |
これらのケースで検討すべきなのは、ミニマムタックスではなく従来からある譲渡所得税の基本です。所有期間5年超なら長期譲渡所得20.315%、5年以下なら短期39.63%。自宅なら3,000万円特別控除、取得費が分からなければ概算取得費の扱いなど、使える制度の確認が先です。全体像は譲渡所得税の計算と節税の全体像と不動産売却の税金完全ガイドにまとめています。
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5. 該当しそうな方へ:2026年・2027年の譲渡時期の考え方
基準所得金額が1億6,500万円を超え得る規模の売却を検討している方は、どの年の所得になるかが重要になります。
譲渡日は原則「引渡し日」
2026年中に引渡しまで完了すれば、原則として2026年分(改正前の基準)の所得になります。
契約効力発生日で申告できる場合がある
2026年に契約し2027年に引き渡す取引でも、契約日を譲渡日として申告できる場合があります。契約条件によって扱いが変わるため、契約前の確認が必須です。
税金だけで売り急がない
追加課税を避けるために売却価格が大きく下がっては本末転倒です。判断基準は常に「税引後の手取り額」です。
時期の実務・具体的な計算例は超高所得層の追加課税強化の解説記事で詳しく解説しています。あわせて、金利環境が売却価格に与える影響(住宅ローン金利上昇と売り時)も判断材料になります。
よくあるご質問
Q. 金融所得課税の強化はいつからですか?
ミニマムタックス自体は2025年分の所得税から始まっています。2026年3月31日公布の税制改正により、2027年(令和9年)分以後は特別控除額が1億6,500万円へ引き下げられ、比較税率が30%へ上がります。2026年分までは従来の基準(3.3億円・22.5%)のままです。
Q. 自宅マンションの売却にも影響しますか?
一般的な自宅売却には影響しません。譲渡所得の税率(長期20.315%・短期39.63%)も、3,000万円特別控除などの特例も従来どおりです。影響し得るのは、不動産・株式などを合算した年間所得が1億6,500万円を超える規模の場合に限られます。
Q. NISAの利益も合算されますか?
財務省資料では、NISA関連の非課税所得は基準所得金額の対象外とされています。一方、確定申告不要制度を選んだ上場株式の配当・譲渡所得は計算対象に含まれるため、「申告していない所得だから関係ない」とは限りません。
まとめ:一般の売主は従来どおり。大口の売却は「年」と「合算」に注意
金融所得課税の強化(ミニマムタックス)は、2027年分以後に適用範囲が広がりますが、不動産売却の基本税率は変わりません。一般的な自宅・マンション・土地の売却では、従来どおり譲渡所得税の特例を確実に使うことが節税の本筋です。
一方、譲渡所得が億単位になり得る売却や、株式譲渡と重なる年の売却は、2026年・2027年のどちらの所得になるかで税負担が変わる可能性があります。売却価格の査定と税務の確認を並行して進めたい方は、お気軽にご相談ください。

この記事の執筆者
本田 憲司代表取締役資格: 宅地建物取引士
建設関係の現場と長距離トラックドライバーを経て、不動産業界に転身。新築マンション販売の最前線でリーマンショックを乗り越え、念願だった独立を果たして「不動産売却サポート関西」を立ち上げました。27年間で培った問題解決力を武器に、ご所有不動産を「自分自身の大切な資産」と捉え、売主様ご本人に成り代わって売却完了まで伴走することをお約束します。



