空き家の維持費は年間いくら?固定資産税・管理費と売却の判断基準|本田憲司

1. 空き家を持ち続けると、年間いくらかかるのか
実家を相続した、転勤で戻る予定がない、といった理由で「とりあえず空き家のまま」にしているご相談は、大阪市内・北摂・堺市など、地域を問わず年々増えている実感があります。ただ、多くの方が見落としがちなのが、空き家は何もしなくても毎年一定のお金がかかり続けるという点です。
主な費目を整理すると、次のようになります。
・固定資産税、都市計画税(毎年)
・火災保険料(年払いまたは長期契約)
・管理委託費(見回り・通気・通水など、業者に依頼する場合)
・庭木の剪定、除草、簡易な修繕費用
・水道光熱費の基本料金(通水のために契約を残す場合)
それぞれの金額は建物の規模や築年数、立地によって大きく変わりますが、目安として年間数万円から十数万円程度の支出が発生し続けるとイメージしておくと、判断の土台ができやすくなります。ここに、屋根や外壁の劣化が進んだ際の修繕費が加わると、さらに負担は重くなります。
2. 固定資産税・都市計画税の仕組みと「空き家特有」の注意点
固定資産税・都市計画税は、毎年1月1日時点の所有者に課税されます。空き家であっても人が住んでいなくても、所有している以上は納税義務が生じます。税額は固定資産税評価額に税率(固定資産税は標準1.4%、都市計画税は上限0.3%)を掛けて計算されるのが基本です。
ここで実務上とても重要なのが「住宅用地の特例」です。人が住める状態の建物が建っている土地には、固定資産税の課税標準額を最大6分の1(200㎡までの部分)に軽減する特例があります。これは空き家であっても建物が存在していれば原則として適用されますが、放置が進み「特定空家等」に指定されると、この特例が解除され、税負担が大幅に増える可能性があります。
📌 住宅用地特例の解除リスク
倒壊のおそれや衛生上の問題があると自治体に判断され「特定空家等」に指定・勧告を受けると、翌年度から住宅用地特例が外れ、固定資産税・都市計画税が実質的に数倍になるケースがあります。
「古い家を残しておいた方が税金は安い」という考え方は、管理状態次第では通用しなくなる点にご注意ください。
3. 火災保険・管理委託費・修繕費の実際
空き家であっても、火災や台風・大雨による被害、近隣への越境などのリスクはなくなりません。むしろ人の出入りがない分、雨漏りや漏水に気づくのが遅れ、被害が拡大しやすい面もあります。そのため、火災保険(可能であれば水災・風災補償を含むもの)は継続しておくのが一般的です。空き家用のプランは居住用より保険料が高めに設定されることも珍しくありません。
管理については、ご自身やご家族が定期的に通える距離であればセルフ管理も可能ですが、遠方にお住まいの場合は管理代行サービスを利用するケースが増えています。月1回程度の見回り・通風・通水・郵便物確認といった基本プランで、目安として月数千円〜1万円台の費用がかかります。
加えて、庭木の剪定や除草を年1〜2回業者に依頼すると、1回あたり数万円かかることもあります。老朽化した建物では、屋根の一部補修や雨樋の修繕など、突発的な出費が発生する点も見込んでおく必要があります。
⚠️ 管理不十分による事故のリスク
屋根材の飛散や塀の崩落など、空き家の劣化が原因で第三者に被害が生じた場合、所有者が損害賠償責任を問われる可能性があります。「誰も住んでいないから関係ない」とは言えず、所有者責任は維持し続ける限りついて回る点を押さえておきましょう。
4. 放置による劣化と「特定空家等」「行政代執行」のリスク
空き家は住む人がいなくなった瞬間から劣化のスピードが上がると言われます。換気がされず湿気がこもることでシロアリや木部腐食が進みやすく、数年単位で建物の状態が大きく変わることも少なくありません。
管理不全が続き、倒壊のおそれ・衛生上有害・景観を著しく損なうなどの状態になると、自治体から「特定空家等」に指定され、助言・指導、勧告、命令という段階を経て、最終的には行政代執行(自治体が強制的に解体等を行い、費用を所有者に請求する仕組み)に至る可能性があります。行政代執行にまで至るケースは多くはありませんが、勧告を受けた時点で前述の税制優遇が外れるため、実質的な負担増は早い段階から始まる点に注意が必要です。
大阪府内でも寝屋川市のように、空き家対策として独自の条例を設ける自治体が出てきており、今後も各市町村で管理不全空き家への対応が強化される流れは続くと見られます。
5. 維持と売却、損益分岐はどう考えるか
「いつか使うかもしれない」「思い出があるから手放しにくい」というお気持ちは、実家を相続された方であれば自然なことです。ただ、判断の材料として、次の2つを比較する視点を持っておくと整理がしやすくなります。
・維持コスト:固定資産税・保険料・管理費・修繕費の年間合計 × 保有予定年数
・売却時の手取り:想定売却価格 − 仲介手数料・譲渡関連費用・税金(特例適用の有無を含む)
特に相続した空き家については、一定の要件を満たすと「被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除(いわゆる空き家の3,000万円特別控除)」が使える場合があります。この特例には家屋の要件や譲渡期限があるため、保有し続けている間に適用できる期間を過ぎてしまう、という事態も起こり得ます。維持を続けることが「先送り」になっていないか、時々立ち止まって見直すことをおすすめします。
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6. 大阪・関西エリアの空き家をめぐる状況
大阪市内の下町エリアや北摂・河内・泉州の住宅地では、親世代が長く住んでいた戸建てを相続し、そのまま空き家になっているケースを日常的に見かけます。エリアによっては再建築不可や接道要件の関係で活用が難しい土地もあり、「売りたくても売り方が分からない」というご相談も少なくありません。
一方で、更地にして土地として売却する、古家付きのまま売却して買主にリフォームや建て替えを委ねる、といった選択肢もあり、建物の状態や立地によって最適な進め方は変わります。維持費の負担が重くなってきたと感じたタイミングで、一度地域の状況に詳しい仲介会社に相談してみるのも一つの方法です。
| 費目 | 年間目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 固定資産税・都市計画税 | 数万円〜十数万円 | 評価額・特例適用の有無で変動 |
| 火災保険料 | 1万円台〜数万円 | 空き家用プランは割高になりやすい |
| 管理委託費 | 数万円〜10万円台 | 月1回程度の見回りプランの場合 |
| 庭木剪定・除草 | 数万円 | 年1〜2回の実施を想定 |
| 突発的な修繕費 | 都度発生 | 屋根・雨樋・給排水設備など |
よくあるご質問
Q. 電気・水道を止めれば維持費はかなり抑えられますか。
A. 基本料金の負担はなくなりますが、通水を止めると排水管が乾燥してにおいや害虫が発生しやすくなるなど、別の劣化要因になることがあります。管理方法とセットで検討することをおすすめします。
Q. 空き家バンクに登録すれば維持費の心配はなくなりますか。
A. 空き家バンクは活用希望者とのマッチングの場であり、登録しただけで売却や賃貸が決まるわけではありません。登録期間中も所有者としての税負担・管理責任は継続する点にご注意ください。
Q. 古くて売れるか不安な空き家でも査定してもらえますか。
A. 築年数が古い、傷みが目立つといった物件でも査定自体は可能です。古家付き土地としての売却や解体後の更地売却など、状態に応じた選択肢をご提案しますので、まずは現状のままご相談ください。
まとめ: 「持ち続ける費用」を数字で把握することが、判断の第一歩です
空き家の維持費は、固定資産税・保険料・管理費といった見えやすい費用に加え、劣化が進めば修繕費や税負担の増加という形で静かに膨らんでいきます。「なんとなく残している」状態が続くほど、判断の選択肢は狭まりやすくなります。まずは現在かかっている年間コストを書き出し、売却した場合の手取り額と比較してみることから始めてみてください。
※本記事は2026年8月時点の一般的な情報にもとづきます。個別の税務は税理士等の専門家にご確認ください。

この記事の執筆者
本田 憲司代表取締役資格: 宅地建物取引士
建設関係の現場と長距離トラックドライバーを経て、不動産業界に転身。新築マンション販売の最前線でリーマンショックを乗り越え、念願だった独立を果たして「不動産売却サポート関西」を立ち上げました。27年間で培った問題解決力を武器に、ご所有不動産を「自分自身の大切な資産」と捉え、売主様ご本人に成り代わって売却完了まで伴走することをお約束します。



